2023年経審改正のおさらい

経営事項審査の2023年改正について、おさらいしていきます。

2022年8月に公布され本年の1月1日に改正され既に取り扱いが変っておりますが、3月決算の事業者様など、これから経審手続きを準備される方が多くなってくるかと思いますので、近年改正の多い軽視事項審査のうち、2023年から適用される内容(一部2022年から適用)について今一度おさらいをしていきたいと思います。

改正の概要

今回の改正は、経営事項審査における「その他社会性(W)」についての改正監理技術者講習会受講者の経審上の加点内容の改正についてです。

「その他社会性(W)」の改正については、これまでの「労働福祉の状況(旧W1)」、「若年の技術者及び技能者の育成及び確保の状況(旧W9)」及び「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況(旧W10)」に新設した「ワーク・ライフバランスに関する取組の状況」「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」をあわせ、新たに「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況(新W1)」として評価することになりました。
また、「建設機械の保有状況(W7)」及び「国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況(W8)」の加点対象を 拡大・追加することとなりました。

監理技術者講習会受講者の経審上の加点内容の改正については、加点対象となる講習修了受講日の見直しに関する改正です。

それぞれ改正内容を確認していきましょう。

「その他社会性(W)」の改正について

改正後の「その他社会性(W)」の評点表です。

項目評点(最大)
W1 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況
  1. 雇用保険の加入状況
  2. 健康保険加入状況
  3. 厚生年金保険の加入状況
  4. 建退共の加入状況
  5. 退職一時金もしくは企業年金制度の導入
  6. 法定外労災制度の加入状況
  7. 若齢技術者及び技能者の育成及び確保の状況【旧W9から移動】
  8. 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況【旧W10から移動】
  9. ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況【新設】
  10. 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況【新設】
(77)
-40
-40
-40
15
15
15

10

15
W2 建設業の営業年数60
W3 防災活動への貢献の状況20
W4 法令順守の状況-30
W5 建設業の経理の状況30
W6 研究開発の状況25
W7 建設機械の保有状況【加点対象を拡大】15
W8 国又は国際標準化機構が定めた規格による登録状況
  1. 品質管理に関する取組(ISO9001)
  2. 環境配慮に関する取組(ISO14001)
    エコアクション21【追加】
(10)


合計(最高点)237

各項目の改正の内容

各項目ごとに改正内容を見ていきましょう。

【W1-9】 ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況(新設)令和5年1月1日以降の申請で適用

内閣府による「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する実施要領」(平成28年3月22日内閣府特命担当大臣(男女共同参画)決定)に基づき、「女性活躍推進法に基づく認定」、「次世代法に基づく認定」及び「若者雇用促進法に基づく認定」について、審査基準日における各認定の取得をもって、以下の評点で評価することとされました。

認定の区分配点
女性活躍推進法に基づく認定プラチナえるぼし
えるぼし(第3段階)
えるぼし(第2段階)
えるぼし(第1段階)
次世代法に基づく認定プラチナくるみん
くるみん
トライくるみん
若者雇用促進法に基づく認定ユースエール

これらの中で複数の認定を取得していても、評価対象となるのは、取得している認定のうち最も高い配点の認定のみ。(最大5点)
例:プラチナえるぼしとユースエールを取得していても5点。

「基準適合事業主認定通知書」「基準適合一般事業主認定通知書」等により認定の取得状況を確認します。

審査基準日において、認定取消又は辞退が行われている場合は、加点対象となりません。

ポイント これらの認定は、まだまだ取得している事業者数が少ないようです。今後増えていくものと思いますが、配点もそれほど大きくないことから、経審の評点アップの為というよりも、本来の目的に沿って取得していき、結果として経審の評点アップに繋がるのが理想かと思います。

【W1-10】 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(新設)令和5年8月14日以降を審査基準日とする申請で適用

建設工事の担い手の育成・確保に向け、技能労働者等の適正な評価をするためには、就業履歴の蓄積のために必要な環境を整備することが必要であり、CCUSの活用状況が加点対象となりました。

審査対象工事

1~3を除く審査基準日以前1年以内発注者から直接請け負った建設工事

  1. 日本国内以外の工事
  2. 建設業法施行令で定める軽微な工事
  3. 災害応急工事(防災協定に基づく契約又は発注者の指示により実施された工事)

該当措置

1~3のすべてを実施している場合に加点

  1. CCUS上での現場・契約情報の登録
  2. 建設工事に従事する者が直接入力によらない方法でCCUS上に就業履歴を蓄積できる体制の整備 ※就業履歴データ登録標準API連携認定システムにより、入退場履歴を 記録できる措置を実施していること等
  3. 経営事項審査申請時に様式第6号に掲げる誓約書の提出
加点要件評点
審査対象工事のうち、民間工事を含む全ての建設工事で該当措置を実施した場合15
審査対象工事のうち、全ての公共工事で該当措置を実施した場合10

ただし、審査基準日以前1年のうちに、審査対象工事を1件も発注者から直接請け負っていない場合には、加点されません。

審査基準日が令和5年8月14日以降である申請について、審査項目に追加されます。
審査対象期間外に加点要件を満たしている場合であっても、加点評価は実施されません。
当該項目追加に合わせて、P点に占めるW点のウェイトが大きく増加するため、各項目間のバランスを維持するべく、総合評定値算出に係る係数が変更されます。

ポイント 令和5年8月14日以降を審査基準日とする申請から適用ということで、今年の8月決算の事業者様の経審から関わってくると思います。その為、今のうちから上記要件に該当する可能性がある事業者様は、CCUSの状況を確認しておいた方が良いでしょう。
また、申請にあたっては内容を確認するための資料として「誓約書」の提出をもって審査を行うということで、申請者としては虚偽申請とならないよう加点要件をしっかり確認して申請する必要があります。

【W7】 建設機械の保有状況の改正内容(加点対象拡大)令和5年1月1日以降の申請で適用

地域防災の観点から、災害時の復旧対応に使用され、また定期検査により保有・稼働確認ができる代表的な建設機械の保有状況を加点評価しています。

1年7月を超えるリース契約も保有と同様に加点
現在の加点対象に加え、実際の災害対応において活躍しているものの、経営事項審査上は加点対象となっていない建設機械が存在しており、災害対応力を適正に評価するため、加点対象建設機械が拡大されました。

従来の加点対象

法令根拠機種検査方法
建設機械抵当法施行令ショベル系掘削機
ブルドーザー
トラクターショベル
モーターグレーダー
特定自主検査
安衛法施行令移動式クレーン(つり上げ荷重3t以上)製造時検査又は性能検査
ダンプ規制法大型ダンプ(土砂の運搬が可能な最大積載量5以上)自動車検査

追加された建設機械

法令根拠機種検査方法
道路運送車両法ダンプ(土砂の運搬が可能な全てのダンプ)
「ダンプ」「ダンプフルトレーラ」「ダンプセミトレーラ」
自動車検査
安衛法施行令締固め用機械
解体用機械
高所作業車(作業床の高さ2m以上)
特定自主検査
ポイント 加点対象にダンプ(土砂の運搬が可能な全てのダンプ)が含まれたのは大きいと思います。特定自主検査が必要なショベル系掘削機などとは違い、自動車検査証で良いので、これまで経審で建設機械の加点が無かった事業者様も加点となるケースが多いのではないでしょうか。今回の改正を見落とさず、せっかく有しているダンプをしっかり経審で申請しましょう。

【W8】 国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の有無の改正内容(加点対象追加)令和5年1月1日以降の申請で適用

環境への配慮に関する取組として、国際標準化機構が定めた規格によるISO14001の登録状況を評価しているところ、脱炭素化に向けた取組が加速する中、環境問題への取組を適切に評価する観点から環境省が定める「エコアクション21」の認証取得状況が加点対象に追加されました。
エコアクション21はISO14001に比べ、認定にあたっての審査基準が少なく、また認証手続も簡便であることから、ISO14001の5点より下位の3点とし、いずれの認証も取得している場合には、これらの評点の合算は行わないことになっています。

W8における各認証の配点

取組認証名配点
品質管理ISO9001
環境配慮ISO14001
エコアクション21

認証の取得状況によるW8の配点表

ISO9001有ISO9001無
ISO14001有エコアクション21有10点5点
エコアクション21無
ISO14001無エコアクション21有8点3点
エコアクション21無5点0点

エコアクション21についても国際標準化機構が定めた規格による登録と同様に、認証範囲に建設業が含まれていない場合及び認証範囲が一部の支店等に限られている場合には加点されません。

ポイント 入札参加資格審査では既にエコアクション21を加点対象としている機関がございましたが、経審での評価対象に追加され、ISOと共に経審と入札資格審査の両方で加点となります。
ISOよりは加点が少ないですが、取得を検討しても良いかもしれません。

監理技術者講習受講者の経審上の加点内容の改正について

令和4年8月15日以降の申請で適用

技術力(Z)の項目において、監理技術者の講習受講者を加点対象としているところ、建設業法上専任の監理技術者として配置可能な期間と経審上加点可能な期間にずれが生じていました。

改正の内容

加点可能な期間を「講習修了の日の属する年の翌年から5年間」とした。

【改正前】
監理技術者講習受講から5年間加点可能
例:H30年2月28日受講の場合R5年2月27日までの経審審査基準日について加点可能。

【改正後】
監理技術者講習を受講した日の翌年の開始日から5年間加点可能。
例:H30年2月28日受講の場合R5年12月31日までの経審審査基準日について加点可能。

講習受講「1」の要件 まとめ

次の全ての要件を満たしている必要があります。

  1. 監理技術者資格者証の初回交付日が審査基準日より前の日付であること
  2. 監理技術者資格者証の有効期限が審査基準日より後の日付であること
  3. 有する資格が1級国家資格相当であること
  4. 建設業の種類の有無、技術職員名簿に記載した業種に「1」とあること
  5. 講習修了した日が審査基準日より前の日付かつ審査基準日が講習修了した日の属する年の翌年から5年以内に含まれていること
ポイント 既に昨年から適用されている改正です。これまで申請していて思うところは、なかなか間違いやすく確認が大変というところです。特に監理技術者証と監理技術者講習会修了証の対象期間を混同しないことです。
審査基準日において、監理技術者証は有効期間内のもの。監理技術者講習会修了証は講習修了の日の属する都市の翌年から5年間と対象期間が異なります。
監理技術者の人数が多い事業者様などは、しっかり確認して申請する必要があります。
(関東地方整備局の審査においては、対象期間外の資料が添付されていた場合、補正連絡等がなく加点対象から外されてしまいますので注意が必要です。)
また、「講習修了の日の属する年の翌年から5年間」となっているので、例えば審査基準日が3月31日の場合、同年2月に新規で講習修了をした方の場合は、以前は加点対象となっていましたが、その年の経審では加点対象とならず、翌年の経審から加点になるということになりそうです。

この記事を書いた人

所長/特定行政書士 岩戸 龍馬

建設業許可、経審が得意です。
業務経歴23年以上。現役の東京都建設業許可事務相談員でもあるので、複雑で困難な事例にも精通しています。誠心誠意をモットーに心を込めて対応致します!

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